彼女は予想の斜め上を行く
彼女の眼を見ながら言う。

「ありがとうございます。金本さん」

共同作業をするようになってよくお目にかかる嬉しそうで。照れくさそうな笑顔を見せて彼女は言った。

「こちらこそ、ありがとう」

なんだかいつも以上に可愛く見える笑顔に直視出来なくて。

眼を逸らしながら、用件を伝えようとする。

「あの……」

「ん?」

決めてたんだ。

プレゼンが、成功したその時には。

「今度、二人で……」

でも、最後まで言えなかった。

「長野さん!」

販売員の女性に声をかけられ、言葉を飲み込んだ。

飲み込んだ言葉は《今度、ふたりで飲みに行きませんか?》という誘い文句。

企画案の採用祝いと下心から来る言葉。

ヘタレな俺が、勇気を総動員させて言おうとしたのに……。

ついつい販売員を恨めしい目で見てしまう。
< 163 / 251 >

この作品をシェア

pagetop