彼女は予想の斜め上を行く
「長野さんにお客様です」

心なしか嫌らしい笑顔を浮かべる販売員の言葉に首を傾げる。

「俺に?」

「お名前もご用件も仰られないんですけど、お急ぎみたいですよ?」

「とりあえず、すぐ行きます」

「あたしも休憩終わりだから、行くね」

金本さんは、素早く工房に戻っていった。



誰だろ?遼生かな?

だとしたら、邪魔な奴。

よりによって、今来んな。

タイミング悪すぎなんだよ。

奴だと確定したわけでもないのに、幼なじみに心の中で毒を吐いた。



「いらっしゃいませ」

不機嫌な顔を隠し、営業課時代に培った笑顔を張り付けて店舗に足を踏み入れ一礼する。

「あちらのお客様です」

販売員に促され、イートインスペースに視線を移す。

こちらに背を向けて、一人の女性が座ってた。
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