彼女は予想の斜め上を行く

「教えて下さいよぉ」

「彼女なんですかぁ?」

下世話な週刊誌の記者張りに迫ってくるパティシエふたり組に圧倒されてついつい「勇人の元カノだよ…」と答えてしまい、心の中で勇人に謝罪した。

「そうなんだ~」

「でも、元カノ絶対長野さん狙ってるよ!」

「わかる!獲物をロックオンした目だよね!」


確かに元カノは、上目遣いと執拗なボディータッチを勇人に仕掛けているようだ。


葵は、この光景をどう思っているのだろうか。

工房中が好奇の視線を俺に集中させていた時。

我関せずと一人黙々とデコレーションをしていた女を見ると、葵は険しい表情でホイッパーを握り締めて力強く動かしていた。

そして、そんな彼女の手元には……。

「金本!生!」

「え?」

「生クリーム!立てすぎ!」

俺の声に手元を見ると、ボールに入った生クリームは力一杯泡立てられ過ぎてボソボソになっており、葵は「あっ…」と小さく声を漏らした。
< 196 / 251 >

この作品をシェア

pagetop