彼女は予想の斜め上を行く


「あたしね…長野君の言葉に、情けないぐらい浮き沈みしちゃうし、元カノと話してるの見て仕事でヘマはする。挙げ句の果てに、野球より長野君優先しちゃう。笑えるぐらいらしくないよね…」


俺の知ってる葵は……

嫉妬はそれなりにしてくれるようだけど、俺が何か言ったところで気にかけることもなくて。

確実に俺より野球を選ぶ。

勇人に見せる葵とは180度……とまではいかなくても120度ぐらいは違う気がする。


「そのくせ、自分からフッたのにますます長野君のこと気になっちゃう…。バカみたいでしょ?」

「そんなことない」と少し強い口調で葵の言葉を一蹴し、自らを嘲笑う彼女の頭を撫でる。



「葵。勇人にしっかり気持ち伝えてこい」


笑顔が見たいためとは言え、今でもどうしようもなく好きな女にこんなこと言うだなんて。

我ながらものすごくお人好しだと思う。


「もう遅いよ…。あたし、思わせ振りな態度とって長野君のこと傷付けたんだよ?」

「大丈夫だよ。まだ間に合う」
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