彼女は予想の斜め上を行く
そんな笑えるぐらいに情けない俺を見て、ガンを飛ばしつつ沈黙を堅持していた女は小さく呟いた。

「なんだ…。あたしバカみたいじゃん……」

どこまでも興醒めしたような諦めたような小さな呟きは俺には上手く聞き取れなかったけれど……。

耳ざとい莉緒には充分過ぎるほど聞こえたようで、小気味よさそうに小さな笑みを浮かべていた。

「……どうもお邪魔しました」

そう言って踵を返し暗闇の中に静かに遠ざかり消えていく金本さんを今すぐにでも追いかけたい衝動にかられたけど……。

フラれた俺にはそんな資格全然ないし…。

何より「勇人……」と名前を呼んで俺の腕に抱き付くサバンナでも平然と生き抜いていけそうなのに、どこか弱くて脆い肉食系女子を振り払うことが俺には出来なかった。



でも本当はわかってた。

上手く言葉すら紡げなかったのも…追いかけることが出来なかったのも…肉食系女子のせいだけじゃない。

本当は君のせい。

あの晩のように今にも泣き出しそうな勘違いさせるような表情の君に……莉緒とキスしてるところを見られた……

―――衝撃のせい。
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