彼女は予想の斜め上を行く

彼女の決意

―――「………で、俺のところへ来たと？」

俺の部屋。

目の前では小一時間程前に別れたはずの今でもムカつくぐらい好きな女が、床に座り込んで俺を見上げ静かに頷いた。

「……アホか！お前は」

思わず荒げた声に肩をビクッと小さく揺らした後、涙目で睨み付けながら弱々しい声で言い返す。

「裕行が何かあったら相談しろって言ったんじゃない……」

「だからって即行来る奴があるかっ！」

普段なら負けじと言い返すのに俺の言葉に肩を落とし俯いて「ごめん……」と呟く葵を見て｡

こいつは重症だな…と大きな溜め息をついた。



「……佐藤のところへ行けばいいだろ？」

こう見えて俺も葵と別れたことは、相当堪えているわけで…。

なにも小一時間程前に別れた元カレに相談という名の傷口に塩を塗るような行為をせずとも｡

多少人格に問題が有っても仮にも親友である佐藤もとい塩原彩の元へ行くのが無難だと思うのだが……。