彼女は予想の斜め上を行く
ドッグボーンスティックというシュガークラフトに使用する道具。白いペースト。茶色いペースト。卵白。カラメル色素。竹串。

それらを駆使して真剣で、でもどこか遊び心を覗かせる表情で、丸め終えたシュガーペーストに細工を施す。

「どう?」

「上出来。これぞまさに長野勇人」

俺の言葉に葵は、ヘタレでビビりなあいつに似せたそれすらも愛おしそうに見つめ笑った。

「しっかし思い切ったこと考えたな」

葵の考えた自分なりのやり方というやつは。

一癖も二癖もあって。

無難とは言い難くて。

不器用で斜め上をいく彼女らしいやり方だと思う。

だけど鈍感、ビビり、ヘタレと三拍子揃ったあの男には……。

「これぐらいしないと伝わらないもん」

葵が冗談めかして小さな笑みを浮かべた直後、ノック音と共に「失礼します」というバリトンボイスが響いた。

葵と俺が扉に視線を這わせると……。

「長野君……」

細身で育ちの良さそうな優しい顔つきに反してイイ声をしているヘタレでビビりな男の姿。
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