彼女は予想の斜め上を行く
「場所を考えろ。場所を!」

うずくまったまま、先輩の言葉に周りを見渡すと……。

作品を見学していたはずの人々の視線は、相変わらず涙目の俺と心配しつつ呆れた表情を浮かべる葵に集中してた。

未遂と言えど我ながら大胆過ぎだと気付かされた。

慌てて立ち上がる。

気まずさと申し訳無さを覚え、周りに頭を下げると葵もそれに付き合ってくれた。

栄誉ある受賞により、注目され輝やく惚れた女に何させてんだ。

大衆の視線からは解放されたけど……。

己の不甲斐無さに落ち込む。

「大体ヘタレでビビりなクセして、一丁前に公衆の面前でイチャつくなっつーの」

完璧な男に口撃レベルの説教を続けられ、更にシュンと肩を落とす。

そんな俺を見て葵はクスリと小さく笑みを漏らした。

そして俺の耳元で、俺にしか聞こえない妖艶な甘い声で囁いた。


「続きは後でね?」

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