彼女は予想の斜め上を行く
そうか。

金本さんのアパートへ行く時もこの道を使った。

先輩の彼女って、金本さん家の近くなんだ。

その時は、呑気にそう考えていた。

だが…………。



「お客さん、着きましたよ」

先輩の彼女の家の前に、タクシーは着いたらしい。


ちょっと待て。

ここって………。

俺の呑気な考えは、一瞬にして消え去る。

先輩は運転手に多めに料金を支払い、外に出る。

俺の帰路まで考えた上での、支払いらしい。

「じゃあな、勇人。今日はありがと♪遅くまで、ごめんな~」

「あっ、はい…」

先輩。ここって…。

聞きたいのに、聞けない。

声が上手く出ない。

料金のお礼すら言えない。



< 38 / 251 >

この作品をシェア

pagetop