彼女は予想の斜め上を行く
「ん~?あおちゃんに会いたくて~♪」

俺は、甘えて葵に抱きつく。

「うわっ!酒くさっ!」

しかめっ面で、俺の体を引き離そうとする。

しかし、俺は離さない。

すると、葵は俺の体にまとわりつく酒以外の香りに気づく。

「ん?なんか女物の香水の香り…?」

険しい顔つきで、俺の服の匂いを嗅いだ。

たまに首筋に当たる吐息が、くすぐったい。

「やっぱ…する…」

確信を得た彼女は、俺を睨みつける。

というか、上目遣いになっている。

その表情は、酔っぱらいの性欲を引き出すには充分過ぎた。

「…キャバでも行った?」

彼女の言葉も気にせず、俺は葵の首筋に視線を向ける。

「行ってないよ……?」

ここがまだ玄関だということも忘れて、葵の白い首筋に唇を這わせはじめた。

「ふ~ん?じゃあ、これは何♪」

葵は、俺のスーツの胸ポケットから一枚の紙を取り出した。
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