彼女は予想の斜め上を行く
「あれ?先輩とは別れて、俺と付き合うんじゃ?」


『勇人と付き合えば?』

『そうするわよ!』

昨夜のこのやり取りを指していると、すぐにわかったらしい。


「あれは、売り言葉に買い言葉」

「さすがに、わかってますよ」

「じゃあ、離して」

「それとこれとは、別です」

「わけわかんない」と言ってため息をつきながらも、金本さんはその手を振り払うことはしなかった。

単に俺の手の力が強いからなのか。

面倒なのか。

多分、両方だな。

でも、振り払われなくてホッとした。



俺の惚れた女は、どうも予想の斜め上を行ったり自由奔放すぎる節がある。

今も乗車した途端寝た。瞬息で。

遠慮のえの字もなく「着いたら起こして?」と言い残して。

その上アイマスクまで用意して、ちゃっかりしている。
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