pinky
変革



日比谷が帰った後、葵がお風呂入ってる間に、あたしの携帯にメールがきた。


「あ。」



知らないアドレスだったから、たぶん日比谷だ。
しかもそこには、衝撃的な文が書いてあった。


『さっきは突然家に行ったりしてごめんね。
ほんとにアドレス知りたかっただけだから。
教えてくれてありがとう。



それにしても変わったカップルだね。
マスコミにばれないように気をつけて。


日比谷隼人(ひびや はやと)
090XXXXXXXX』


電話番号までついてる・・・。



しかも、もしかして葵とのことバレてる!?
嘘でしょ・・。
いや、でも確かにこの言葉には、そういう意味がある。


意外と鼻が利くんだ。
あいつ。
短時間、家にいただけで、勘づくなんて只者じゃない。



「どうしよ・・・」



やっぱり、日比谷なんかにアドレス教えるべきじゃなかったのかな。
この生活が壊れてしまうかもしれない。

平穏だった生活が、終わってしまうかも。



こんな文面になんて返信したらいいのかわからない。
マジメに送ったところで、ハッタリだったらそれこそ終わりだ。
冗談で返そう。
でも、気が動転してどう切り返したらいいのか思いつかない・・。


焦れば焦るほど、自分のボキャブラリーは混乱して、言葉が出てこない。



葵には秘密にしよう。
余計な不安をかけたらかわいそうだから。
これは、あたしだけでなんとかする。



『日比谷さんも冗談きついっすね笑

でも、葵のこと奪ったら承知しませんから(怒)』



たった二文だけ。
これが精いっぱいだった。
でもあたしは、次に帰ってきた日比谷の一言に完全に逃げ道を塞がれることになる。




『ほんとに葵ちゃんのこと守りたかったら、
そんな切り返しじゃ今後拙いんじゃない?

俺、ちゃんと奏と話したいんだけど。
二人だけで、あんまり誤解されない方法で』



だめだ、って、咄嗟にそう思った。
このままじゃうまく日比谷に丸め込まれる。

葵を守るなら、やっぱりちゃんと話さなきゃいけない。
日比谷と。


ちゃらくて調子のいい奴、っていうのは表向きの顔だったんだ。
日比谷はあたしと葵の関係を見破ったけど、あたしは日比谷の仮面に気づけなかった。


この時点で負けなの?


いや・・負けはしない。
絶対。
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