空賊。
「おじさん……」

口から落胆の声が漏れる。

……いけない。
諦めたらそこで終わりだ。
もう、二度と目の前で人を死なせないと誓ったじゃないか。

諦めるな、走れ。最後の一秒まで。

スタージャは薬屋に背中を向け、他の薬屋を訪ねていく。
だが、スタージャの欲しい返答はもらえない。

“見ず知らずの者を助ける奴が何処にいるか”
……こんな言葉ばかり。

何で……何で、人を助けない?
自分が良ければそれでいいのか?
なぁ……本当にそれで良いのかよ?

……良い訳ないだろう。
たとえ誰一人ユサを助けようとしなくても、あたしだけは助ける。

自問自答を繰り返すばかり。

こんな世の中が嫌いで……憎い。

“貴族貴族貴族……”

庶民は貴族を憎む。だが、自分はどうなのか?
自分の為にしか何かをやろうとしない者たちも、貴族たちと一緒ではないか。

何故、助け合って生きてけない?
何故……自分のことしか考えられない?

< 53 / 54 >

この作品をシェア

pagetop