抹茶な風に誘われて。~番外編集~
「――日付が変わるまでに、帰せるかな」

 自分でも自信が持てん、なんて困ったように呟く静さんに抗議しかけた唇は、再び振ってきたキスの嵐にその働きをはたせなくなった。

 ――ハッピーバレンタイン、恋人たちにはもっと熱い夜を。どんなチョコレートよりも甘い味を楽しむならご用心――お酒よりも怖い、恋の魔法に酔い過ぎないように。

 本棚の、空いた場所に立てかけられた雑誌の表紙に躍る謳い文句。

 今まさに語りかけられているようなその言葉は、ベッドに沈んだ私たちにはもう聞こえなかった。
 



 Fin.
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