ハレゾラ
愛しい彼


誰がそんなに食べるんですか? というくらいの量の食べ物や飲み物を買い込ん
で、車に戻ってきた彼。
そしてその顔は、買い物をして少し落ち着いたのか、私が逃げずに待っていたか
らなのか、幾分優しさが戻っていた。
緊張感で身体がコチコチになっていた私は、ホッと一息ついてその緊張を解きほどく。軽く伸びをして肩をさすっていると、視線を感じた。
ゆっくり彼の方を見ると、笑みは笑みでも不敵な笑みを浮かべてなにか言いたそ
うな顔をしていた。


「何……かな?」

「咲さん、余裕あるなぁと思って。まあ俺は一向に構わないけどさ」

「余裕? 私が? この先が全く読めてないのに、余裕も何もないでしょ」


そう言ってから窓の方に向き直った。
いや……。全くこの先が読めてない……訳ではない。
今までの車の中での状況からすれば、翔平くんの家に着くなり……そうなること
は分かっていた。
私自身、坂牧の前だったとはいえ、あんな激しいキスをされては少なからず身体
が彼を欲してしまっている。
だから、そうなることが嫌なわけではなかった。
ただ、“おしおき”をされる覚えはないんだけどなぁ。
そこだけは、納得いかないんだけど……。
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