Black Coffee.
あの後、あたしは気付けば
家にいて、蹲っていた。
どうやって帰ってきたのか
よく分からないけど、全身が
びしょ濡れで、
多分、歩いたんだろうけど。
鞄を開けた覚えもないし、
財布を取り出した覚えもない。
現にお金は減っていない。
無意識というのは怖いもので、
本当に”気付けば”家にいた。
「 ・・・あ、紗希? 」
濡れた体をタオルで拭きながら
一日中電話をかけていてくれた紗希に
初めて連絡をした。