Black Coffee.
──────────カランッ
「 入って行かないんですか? 」
何時間か前に聞いたあの声と、
耳に響くドアベルの音。
振り向けば、開いたドアの隙間から
彼がひょっこり顔を出していた。
「 ・・・・え、っと・・・ 」
「 丁度、お客さん居ませんし
寄っていってくださいよ、菜緒さん 」
優しい笑顔で名前を呼ばれて
断れるはずがない。
彼から顔を背けて、少しの間
緩む頬を両手で押さえて、
「 じゃあ・・・お邪魔します・・・ 」
そう言えば、彼は”はい”と
可笑しそうに笑っていた。