Black Coffee.
第一印象は文学少年。
窓の外を眺めるその目は
どこか遠くを見ている気がした。
何度か本を読んでいるところを
見かけたけど、伏せた目や
ページを捲る細長い綺麗な指先。
彼の体のパーツは完璧すぎて
見惚れないことがなかった。
「 ・・・菜緒さん? 」
「 えっ? 」
彼の言った通り、店内に
お客さんはいなかった。
窓側のテーブル席へ向かうあたしの
手を掴み、彼はあたしをカウンター席へ
座らせると慣れた手つきで珈琲を淹れて
”どうぞ”とあたしの目の前に出した。
ぼうっとしていたあたしが悪い。
苦そうなこの匂いは確実に
ブラックだろう。
淹れ立ては美味しいと聞くけど
そもそも珈琲が苦手なあたしにとって
淹れ立てでも美味しいと言える自信はない。