雫-シズク-
見回りを警戒して広げた教科書の下に隠した漫画を読む葵さんが、知らんぷりしてほお杖をついている。


そんな葵さんにまだたくさんのかさぶたと、白目が充血して真っ赤なままという酷い顔でしかめっつらをした。


そしてまたどうにかギプスと腕のすき間にシャープペンシルを突っ込もうと必死になる。


入るわけがないとわかっていても、じっと我慢なんかしていられないから仕方ない。


「ねぇねぇ、なんかもっと細い物ないかな!?シャーペンじゃ全っ然無理だよっ」


「……ああ?さぁな?」


漫画から少しも目を離さない葵さんは完全に生返事だ。


いくら悪戦苦闘してもどうにもならなくて苛々した俺は、机のはじに置いた三角巾を右手でぐしゃっと握りしめた。


ちょうど手首と肘の真ん中くらいが折れていて、他は軽い打撲程度の俺の腕。


担当の医者からは、痛くなければたまに三角巾を外した方が関節も固まらなくていいと聞いている。


< 167 / 347 >

この作品をシェア

pagetop