ライアーライフスタイル

「いい加減にしてください。これ以上個人情報を開示するつもりはありません」

しかつめらしい言い方をしたのは、本当に迷惑であることを表現するためだ。

どうやら良識のある山村は、察知して引いくれた。

「……わかりました。でも、俺なりに調べます。思い出してみせます」

きっと大丈夫。

同じ学校を卒業していないから、卒業アルバムを見たところで私は載ってない。

投稿型SNSは見る用でしか使っていないし、使っているものでも実名登録などしていない。

試しに自分の名前をネットで検索したことがあるが、私に繋がる情報などひとつも見つからなかった。

「それでもダメなら、自分の直感を信じてあなたを口説き落としてみせます」

なんて自信過剰なの。

せいぜい頑張ってみればいい。

私が落ちることは絶対にないけれど。

「失礼します」

私は彼の言葉を無視して、今度こそ駅へと向かった。

酔いはすっかり覚めてしまった。

いつものコンビニで甘めのワインでも買って帰ることにしよう。

今日ならあの店で、山村と出くわすこともない。


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