ライアーライフスタイル




ある日の午後、堀口さんが温かい紅茶を持ってきて言った。

「真咲ちゃん、なんだかお疲れじゃない?」

確かに疲れてはいるかもしれない。

身体的にではなく、精神的に。

舟木と山村をどうしようか考えていると、それだけでメンタルを消耗してしまうのだ。

「そんな顔、してました?」

そう尋ねると、堀口さんは快活に笑う。

「してたしてた。憂いた表情も綺麗だけど、美人は笑ってないとね」

彼女が手本とばかりにスマイルを作るので、私は彼女に倣う。

彼女は満足げに「よくできました」と告げ、おやつに個装されたクッキーを一袋くれた。

堀口さんは年齢なりに綺麗だし、美人のなんたるかをよく知っている。

年と経験を重ねた者にしかない気品がある。

彼女はきっと、もともとは私が逃げたサークルにいるような女性なのではないかと思う。

彼女には敵わないなぁと思うのも、そのためなのだと思う。

私は一旦伸びをして深呼吸をした。

エアコンの効いている部屋の空気は乾燥している。

淹れてもらった紅茶を一口。

私は、美女として生きる決意をした。

くたびれている場合じゃない。

職場の華としての役割を果たさねばならないのだから。

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