私の片想い事情 【完】

二人でふざけながら食事の用意をしていると、「ただいま~」という彰人君の声が聞こえてきた。


ちょっと前に会ったときから少し背が伸びた彰人君は、「みなみちゃん、来てくれたんだ」とにっこり笑い、嬉しそうに晩御飯のメニューを聞いてくる。


汗くせぇからシャワー浴びてこい、という隼人。


お腹すいて無理、と私にすり寄る彰人君。


そんな彰人君に、作っておいた一口ほどのおにぎりを口の中に入れてあげる。


あ~最高、という彰人君のそのふやけた笑顔に癒される。


私にひっつく彰人君をべりっとはがし、「とっととシャワーを浴びて来い」とバスルームへと連れていく隼人はお兄ちゃんの顔をしていて、ああ、本当に彰人君が好きなんだな、と嬉しくなった。


見事な烏の行水、数分でシャワーを浴びてきた彰人君と隼人と私の三人で、他愛のない話で大笑いしながらご飯を食べた。


隼人が切った野菜に彰人君が文句言い、隼人にボコられる。


彰人君が食器を洗うのを手伝ってくれて、部活の話をしながらコーヒーを飲む。


二人が仲良くリビングでテレビを見ている間に、洗濯を済ませ、私もお風呂を借りた。


あっという間に夜もふけいく。


私は、いつもの客間にお布団を敷き、明日朝練がある彰人君の為に、目覚まし時計を5時にセットした。


こうして、いつもとかわらない西崎家での家政婦生活がまた一週間始まった。


うん、亜紀さん、バカだねって言われても、やっぱり私はこれで満足なの。


こうして隼人の傍にいれるだけで―――







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