私の片想い事情 【完】
私は深々とイスに腰掛け、事務所の時計を見た。長針は10時ちょうどを指している。
あいつが来ない。
イライラしながら、生徒ファイルを開いていると、ドアがガチャと開かれる音がした。
「おはよ~ございま~す!」
全く……間延びした喋り方は直っていない。
「遅いわよ!」
私は挨拶もせずに、ドアの傍に立つ瀧川君を一喝した。
「え?時間通りです、けど?」
「普通は10分前、せめて5分前に入ることね」
基本中の基本でしょう?そんなことも分からないのか、と私は鼻で笑ってやったが、当の本人はどこ吹く風だ。
「は~い♪以後気をつけま~す」なんて言ってやがる。
私はジロっと瀧川君を睨んだ。