英国喜劇リコレクション
重い水を畑に運んでいくと、作業で両手を泥にまみれさせた母が顔を上げた。


「はい、お水」

「ありがとう、セルマ。…あら、今日も濡らしちゃったわね」

見ればセルマの服はびしょ濡れ。井戸からの道を振り返ると、大小様々に溢れた水が点々と。

口切りいっぱいに入れたはずのバケツの中身は、もう半分もない。

汚してしまった服と水の道とを見比べて、セルマはおそるおそる母を見上げる。

「無理しなくっていいのよ? 次からは何回かに分けて持ってこようね」

良かった! 怒ってない!

セルマは顔を輝かせて頷いた。

「うん! おかーさん、お手伝いする!」

「あら、ありがとうね」


< 4 / 110 >

この作品をシェア

pagetop