理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
翌日…

会社で仲良しのマキ先輩と、会社の近くにある『カフェ・ロータス』へとランチに出かけ、先輩の話に耳を傾ける。


「10代から20代前半は、仕事に終われながら、服やメイクにお金と労力を注ぎ込んで…

少しでも条件の良いオトコを探して…

無難で幸せな未来を手に入れる為に、自分のハリボテ作りに必死だったわ。


でも、25才を過ぎると、仕事に慣れて余裕が出来るし…

早々に結婚した友達の、家庭での愚痴を聞かされて過ぎて、結婚が夢物語じゃなくなるの。


その代わりに旅行に行ったり、美味しい物食べたり…

自分へのお金の使い方を覚えて…

溺れすぎない、大人の恋愛だって出来るようになるわ」

何の話の流れからだったのか、仲良しのマキ先輩にそう言われたのが、全ての始まりだった様に思う。


「彩も旅行したり、美術館に行ったり…

とにかく、色んな本物に触れてみたら?」

「ホンモノ…ですか?」

「そう、本物。

例えば…
相撲や歌舞伎、能、狂言、文楽みたいな日本の伝統を生で観てみるとか」

マキ先輩の言葉に、頭を巡らすけれど…

「…チケット高そう」

と、尻込みしてしまう。


そんな私にハッパをかけるように、

「自分への投資よ!
つまらない、楽しみのないアラサー、アラフォーなんて、目もあてられないわよ」

力説するマキ先輩に乗せられるように…

「そうですよねぇ…」

と、思わず頷くと、なんだか本当にそんな気がしてきて…

『これぞNipponって感じがする、京都に旅行なんて良いかな~』

なんて思ってしまう、単純な自分がいた。



…この会話が、自分の運命を変えてしまうなんて、思いもせずに。
< 3 / 151 >

この作品をシェア

pagetop