勿忘草
この手の話になるとうるさい親父を、追い返すようにして、俺はまたベンチに座った。
確かに、包み込むような暖かな日差しは気持ちいい。
しかし、俺には勉強がある。
春休みは、進学を目指す俺には大切な勉強時間だったのに。
「……最悪。」
家に帰るバスは、こんな田舎じゃ一時間に一本しかない。
参考書でも、持ってくれば良かったと少し後悔が残る。
「…はぁ…」
溜め息をひとつ吐いて、枝先から見え隠れする空を見上げた時だった。