茜色の葉書
「どうするの? これから……」

 返ってこない答え。そして、沈黙……。

 ただひたすらに沈黙を続ける少女。

 まるで言葉を、話すことを忘れてしまったかのように……。

 フッ、と瞳を閉じてしまうと、あの砂浜のときのようにまた消えてしまう。

 そんな気がしてならない。

 結局のところは他人事。

 いろいろと知ってはしまったけれど、無関係を決め込もうとすればできないワケじゃない。

 まあ、いますぐに追い出すつもりはないけれど。

――でも……。

 僕は他人と関わるのが好きじゃない。

 なぜかって? それは……。

「……手伝おっか? その人、探すの」

 こんなことをいってしまうから。

「え!? でも……」

「ここまで事情知っちゃったら、ほっとけないよ。お金は僕が貸してあげるから」

 そのお金は当面の生活費。

 家賃込みのヤツ。

 どれだけ数え直しても、他人に貸すことができるほどの余裕は、ない。これっぽっちも。

 それでも口から吐き出される言葉はそんな感じだ。

――いつも、いつも……。

 なにかにつけて僕は“いいこちゃん”を演じる。

 他人にいいように見られたいから、というのとは少し違う。

 僕が演じる理由は、

――傷つきたくない……、

 からだ……。

――他人に拒まれるのが怖い……。

――嫌われたくない……。

――独りになりたくない……。

 付き合いが永くなれば永くなるほど、その想いは強くなっていく。自分の昔を知っている者ほど。

 他人に干渉されることが好きではないくせに、他人の目ばかり気にしている自分。

 だから僕はここにきたのかもしれない。

――自分を知らない……真っ白な、この土地と……。

「いこう」

 僕らは旅立った。

 彼女は京介という人に会うために。

 僕は“いいひと”であるために……。

 陽はとうに暮れ、空には名も知らぬ星が瞬いていた。

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