-Vermillion-

-AVRIL 19 (Jeu)-


玄関のチャイムが鳴って、

扉の鍵が回る音がした。


「朱乃 (しゅの) いる?入るよー。」


階段を登る足音が近づいて来て、

部屋のドアが勢い良く開いた。


「あんた、また学校サボったでしょ!」


思い切りカーテンを開けられて、

あまりの眩しさに仕方なく目を開く。


「今、何時…?」

「十二時。
 あんた来ないとつまらないし、
 あたしもサボって来た。」


加奈は鞄を床に放ると、

勢い良く布団を剥いだ。


「さぁ起きて!お昼買ってきたから。」


顔を洗ってリビングに降りると、

加奈は背を向けてニュースを見ていた。


「あ、起きた?
 カツ丼と牛丼、どっちがいい?」

「牛丼…」


(昨晩十時頃に余山市一丁目路上で
 発見された男性の遺体ですが、
 身元は未だ不明。
 警察は殺人事件と見て、
 身元確認及び捜査を進めています。)


「一丁目って、学校の近くじゃん!」

「加奈、七味取って…」

「暢気だねぇ。
 何かと物騒だから気をつけなよ?」

「加奈も…知らない人に、
 ついて行っちゃ駄目…」
 
「あんたに言われたくないわ。」


 二人の割り箸を割る音が重なった。


「いただきます。」

「いただきます…」

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