-Vermillion-

(お昼のニュースです。
 十八日に余山市一丁目で
 見つかった変死体ですが――)

 ピ。
 
(解剖の結果によると、発見当時既に
 死後二日間が経過していた事――)

 ピ。
 
(警察の調べでは、
 無差別通り魔事件の可能性も
 捨て切れないとの見解――)


「あぁ、もう!
 どこもニュース特番かよ!」


加奈はリモコンをソファーに投げた。

 
「今日は、集団下校かな…?」

「中等部はそうだろうけど、
 高等部は違うんじゃない?」

「あ…もう高校生か…」


中学四年に進級した気分だった。


私達が通う余山市立東高校は、

市内唯一の中高一貫校だ。

余山市民は住んでいる地区によって、

通う小学校が決められる。

そしてそれによって、

通う中学校が決まる規則になっていた。


つまり小・中の間は、

近所の面々と顔を合わせる事になる。


しかし

高校からは自由に進路を決められる為、

私の瞳の色に免疫のない生徒が、

他市や他校から大勢やって来る。

入学式で見た新顔の多さに、

学校に行く気を失くしてしまった。


食器の片づけをしていると、

玄関の方で物音がした。

真朱 (ましゅ) が帰って来たらしい。


「ただいま。」

「おかえり…」

「真朱おかえりー!」


加奈は私の兄を

自分の兄の様に慕っている。

一人っ子だから、

寂しいのかもしれない。

「まだ昼だっていうのに……
 お前ら今日も学校行ってないだろ。」

「どうせ変な事件のせいで、
 午後は授業ないと思うよー。」

「あぁ、あれね。

 二人とも気をつけろよ?」


「出かけるの…?」

再び玄関へ向かう真朱の背中に、

思わず問いかけた。

「バイトだよ。
 荷物を取りに戻っただけ。
 晩飯までには帰る。」

「行ってらっしゃい…」

「バイクでしょ?気を付けてね!」

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