-Vermillion-
 学校に着いてから、授業中に事件の経過を改めて整理してみた。

{まず被害者は全員余山市民であり、
 遺体発見現場は一丁目から、住所は五丁目から順に下っている。
 遺体発見は常に殺害の二日後で、毎回二日置き。そして、黒い魔犬}
 
「水野、何書いてんだ?お、捜査報告書だな?
 これ、西山にも見せようぜ。」

 屋上での昼食後、三人で私のノートをさらに整理した。
 ふと隣の中山市の方で、
 大きな雷が落ちる音が聞こえて、皆同時の空を見上げる。
 濃くて重たい雲に覆われた、強い風の吹く空。
 嫌な天気になりそうだ。

 三人は視線をノートに戻した。追加点が幾つかある。

{犯人の殺害方法は不明だけど、
 死因は体内の血液を失った事による失血死。
 対象は無差別で、時間もまちまち。そして、古い扉}

「古い扉って何の事?」
「二十四日に俺と水野で三丁目行った時、水野が見たって。」
「その後、四丁目寄りの大通りでも、見た…気がする…」
「それで、魔犬と何の関係が?」
「知るか。それを調べるんだろうが。」
「でも…今日は、夕方から、雨だって…」

 その時私達は、
 余山連続殺人事件の犯人である魔犬の、捜査方法を決めた。
一:夜十時には帰宅する
二:危険には近づかない
三:そして雨の日は捜査をしない

 これがそもそもの愚考であり、
 私達の捜査が、ただの愚行である事に繋がるのだった。
 
 放課後下駄箱に行くと、大勢の生徒が立ち尽くしている。
 天気予報の通り、ひどい土砂降りだったのだ。
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