-Vermillion-

-MAI 8 (Mar)-
鳴り続ける目覚ましと止めて、ゆっくりと体を起こした。
七時半、今日は学校か……
制服に着替えてリビングに降りると、真朱がコーヒーを飲んでいた。
「お早う。朝ご飯は俺が作ったから、早く食べて学校行きな?」
「うん…いただきます。」

真朱が本のページを捲る音と、コーヒーメーカーの鈍い機会音。
昨日から家でテレビを付ける習慣が無くなった。
付ければきっと、ニュースで加奈の事を報道しているはずだから。
堅苦しい言葉で淡々と読み上げられるなんて、耐えられない。

加奈の事をよく知りもしないアナウンサーが、
さも悲しそうな顔、悲しそうな声で、
「本当に残念でならない。早く事件を解決して欲しい。」
なんて言うんだ。
対して感情もなく、さほど悲しいとも思っていないくせに。

実際私達もそうだった。
事件が続いた約三週間の間、加奈も含め八人の人が亡くなった。
その事をニュースで知って酷くショックを受けたけど、
心に穴が開いた様に感情が消えて、
どんな言葉にしても表せないこんな気持ちになったりしなかった。

でもその時遺族はどれ程涙を流しただろう?どれ程無念だっただろう?

私は食器を片づけて部屋に戻ると、美影を籠に入れて家を出た。
学校に着くと、爽が下駄箱で待っていた。手に黒いリボンを持っている。
「水野!これと今付けてるやつを付け替えろって、生徒会が。」
東高の制服はリボンとネクタイが赤だ。
昨日の全校集会で、一週間黒いのと付け替える事になったらしい。
さすが余山市内で一番人気の公立校、やる事は徹底している。

お昼休み、売店でパンを買うと屋上へ向かった。
爽と二人で黙ってご飯を食べる。
沈黙に耐えかねた爽が、携帯で音楽を掛けた。
二、三年前に流行った曲ばかりだ。ふと、耳に馴染んだ曲が掛かった。
加奈がよく口ずさんでいた、お気に入りの歌だ。
爽が黙って曲を変える。

私は空を見上げた。雲がとても高い。
今日も、お天気だ。
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