-Vermillion-
夕方、同じ学年の生徒は部活動が終わったら、
正門に集合して学校が用意したバスでお通夜に行く手筈になっていたけど、
私と爽は一度家に戻って、
西山のおばさんの車で先に会場に向かう事になった。

遥と爽を乗せた車に、私と真朱が乗り込むと、
余山のふもとにある会場に入った。
既におじさんは会場にいて、親戚達の相手をしている。
暫くお手伝いをした後、準備が整った所でお葬式が始まった。

白と黒で埋め尽くされた部屋。
百合の香り、黒い服を着た人々、そして泣き声。

淡々と読み続けられる経を聞きながら、
私は真朱の隣でひたすら俯いていた。
膝の上で握りしめた拳が凄く痛い。爪が掌に食い込んだのかもしれない。
前に座っている爽と遥の背中が震えている。
真朱は今、どんな顔をしているだろう。

親族達の後に並んでいる学校の生徒の列に合流して、加奈にお香を上げた。

――加奈…ごめんね…
  初めから大切な人を、巻き込むべきじゃなかったのに――

それから前にいる真朱の真似をした後、席に戻って足の痺れにひたすら耐える。
遥は泣き崩れて顔がぐちゃぐちゃだったけど、私は泣かなかった。

涙など、昨日今日でとうに枯れてしまったから。
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