state of LOVE

 日常×非日常=?

翌日、翌々日、そのまた翌日。待てど暮らせど、美緒の母親からの連絡はなかった。

これはそろそろ本格的にヤバイんじゃ…と、授業中に上の空で考えていた俺の脇腹を、今日も今日とて隣を陣取ったレベッカが小突く。

「真面目にやらないと、セーシャインになれないデスヨー」
「ですね」
「恋のお悩みデスカ?」
「だったらいいですねー」

わかってるくせに。と、ジトリと視線を遣ると、レベッカの唇が「わーお」と小さく日本語の形に動いた。

「じゃあ、そこの余裕がありそうな佐野君と牧本さん、前に出て」
「は?」
「代表でメイクしてもらうから」
「はい?」
「四の五の言わずに前に出る。さぁ」

急かされて立ち上がったものの、レベッカまで一緒に立ち上がって首を傾げる俺。そんな俺を見て、同じように首を傾げるレベッカ。

「何でお前まで立ってんだよ」
「what's?」
「呼ばれたのは俺とマキモトさん?だぞ」
「その牧本さんデスヨー」
「あ、お前のfamily name牧本だっけ」
「oh!イマサラ過ぎてびっくりデスネ」

そんな俺達のやり取りに、教室中の至る所からぷっと噴き出す声が聞こえた。

入学当初から比べると、随分と和やかに接してくれるようになったものだ。当時は怖がって誰も声を掛けてこなかったというのに。


教壇へ向かう間も何人かに声を掛けられ、愛想笑いで誤魔化してやり過ごす。外面精神は、偉大な父に教わった気がする。何とも有難いことだ。

そんな父親に感謝する立派な息子の俺に、教壇で待ち構えていた講師はにっこりと笑って呟いた。

「俺の授業聞いてないとか、いい度胸してる」
「あー、スミマセン。MEIJIセンセー」
「センセー、怒るとシワが増えるデスヨ」

そう。今教壇に立っているのは我が家の大魔王、メーシーで。

月に数回ある講義の真っ最中に俺とレベッカが私語を慎まなかったものだから、絶賛お怒りモードなのだ。
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