state of LOVE
かと言って、ちーちゃんをどうこうしようなどと思ったことは一度もない。そう。神に誓って。

「ああゆうさ、何て言うのかなー…」
「ん?」
「最初は、雲みたいな人だって思ってたんだ。いつもふわふわしてて、自由な人だなって」
「あー。そんなイメージあるかも」
「でも、違うんだよね」

ちーちゃんに対しての想いは、さすがにハルさんの前では吐き出せない。

どうこうしようとは思ってはいない。けれど、聖奈と同じ性質のハルさん相手に想いを告げられるほど、俺はそこまで勇者になれない。

「向日葵みたいな人なんだ。いつでも太陽だけを見てて、その太陽に合わせてどんな方向でも向いて、太陽が無けりゃ生きてけない」
「んー…」
「うちの彼女は…聖奈ってんだけど、聖奈は違うんだ」
「聖奈さんはどんな人なの?」
「んー…」

太陽でも向日葵でもない。雲でも風でもなく、雪でも嵐でもない。

「聖奈はさ、海」
「海?それだけ大きいってこと?」
「んー。それもあるけど」
「ん?」
「光の加減によって色んな色になれるけど、元々は透明でそれだけは絶対変わらないんだ。何でも受け入れるけど、絶対に自分は変わらない。強いんだよ、俺よりずっと」
「んー…難しい!」
「俺もよくわかんない」

指示された最後の角を曲がり、ゆっくりとブレーキを踏んで車を停める。ハザードを点けシートを倒し、「わおっ」と驚くレベッカの手を取った。

「俺は、自分を好きでいてくれる人は皆好き。聖奈だけに限らず、レベッカも、愛里も」

レベッカよりも少し小さな手。短く整えられた爪には、薄いピンク色が塗られていた。

「likeなら、俺は受け入れてあげられる。likeでいいなら、俺は愛里に与えてあげられる」

その手を取って震える声でそう告げると、そっと右目に瞼に柔らかな感触が落ちてきた。
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