state of LOVE
「聖奈」
「・・・」
「聖奈っ!」

俺の怒鳴り声に、聖奈とちーちゃん、そして美緒の肩が同時にビクンッと揺れる。ギュッとちーちゃんを抱く力を強めたハルさんを見て、俺は美緒を強く抱きながら立ち上がった。


「どうしてちーちゃんばっかり…いつだって…いつだってちーちゃんばっかり…皆…はるも…けーちゃんも…マナも…皆ちーちゃんばっかり…」


まるで呪文のように小さく呟きながら、聖奈は後ずさりをしてドンッと窓に背を預けた。そのままズルズルと座り込み、じっと二人を見つめながら泣いている。

その目は、ちーちゃんと同じく虚ろだった。


一年と数ヶ月前、俺は聖奈を恋人にした。

いつだって、どんな時だって俺を受け入れてくれる聖奈は、俺にとって最高の恋人で。毎日寂しくて、不安で、妹に依存することでそれを何とか遣り過ごしていた俺を、両手を広げて受け入れてくれた。一生愛してると泣いてくれた。

そんな聖奈の全てを包む。俺は大介さんにそう言ったはずなのに。


「聖奈、ごめん」


美緒を抱いたまま、虚ろな目で泣き続ける聖奈を抱き締める。痛い。痛い。胸の奥がそう必死に訴えていた。

「ごめん、聖奈。もう頑張らなくていいから」

わかってほしい。受け入れてほしい。愛してほしい。要求するばかりで、俺は聖奈に無理をさせ続けてきた。

あの日の俺やハルさんに対するらしくない反抗は、もう限界だ!と訴える聖奈のSOS信号だった。

それでも尚無理を強いてきたのは俺で、わかってやれなかったのも俺で。

カッコつけて大介さんに頭を下げたけれど、実は誰よりカッコ悪かった。それを、こんな状況で知るなんて。

いや、こんな状態になるまでわからないなんて、俺は恋人失格ではないだろうか。


「ごめん、聖奈。俺はお前を世界で一番愛してるから」


そう誓うから、どうか許してほしい。そんな思いを込めて、聖奈の涙を拭う。それを真似ようと聖奈の頬に伸ばされた小さな手を見て、思わず涙が零れた。

「かーちゃ」

わんわんと泣いていたはずの美緒が、不安げに聖奈を呼ぶ。そして、俺の腕の中から抜け出し、よいしょと聖奈の首元にしがみ付いた。

「かーちゃ。かーちゃ」
「美緒・・・」
「かーちゃ」
「美緒」

ギュッと美緒を抱き締め、聖奈が声を上げて泣き始めた。良かった…正気に戻ってくれた。と、頬を伝う涙を袖口で拭いながら二人を抱き締める。

「俺がお前達を守るから。何も心配要らねーから」

情けない男でごめん。そう続けると、涙で濡れた聖奈の瞳が漸く俺を映してくれた。
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