state of LOVE
「セナはマナが好きなんです。だから、誰にも渡したくありません。我が儘でごめんなさい」


しゅんとした聖奈を見て、腕の中の美緒は不満げで。ツンと唇を尖らせ、短い腕を懸命に俺へと伸ばした。

「とーちゃ!め!」
「んー?」
「めー!」
「はいはい。とーちゃんが悪かったです。sorry」

どうやら、我が家の女同士の結束は固いらしい。ぶぅっと頬を膨らせた美緒を受け取ると、ポカポカと胸を殴られた。人を叩いてはダメ。そう教えたはずなのに。どうやら再教育が必要らしい。

「かーちゃんみたいにいい女に育てよ」
「あれ?ちーちゃんが良かったんじゃなかったですか?」

誰も彼もがちーちゃん。それではあまりにも可哀想ではないか。そう思い直したのは、つい数時間前のことだけれど。

「ちーちゃんはこの世にたった一人。だからいいんだ」
「随分と勝手な…」
「お前も、お前も…この世でたった一人。俺が愛する奥さんと、俺が愛する娘だよ」

三人で額を寄せ合い、改めて温もり確認する。


「俺達は家族だ。これからは三人で幸せを守ろう」


随分と都合が良い。と泣きながら笑う聖奈と、それを見てペチペチと俺の頬を叩く美緒。これが俺が守るべきモノ。大切な、大切な幸せなのだ。

「腹減ったな。メシすぐ出来る?」
「はい。すぐに用意します」
「よろしくねー、かーちゃん」
「かーちゃ!」

ぐすりと鼻を啜りながらキッチンへ駆けていく聖奈を見送り、背凭れに体を預けてその様子を窺っている美緒を抱き寄せる。


飴玉みたくコロンと丸い目をした、小さな女の子。


今回の大きなトラブルの元になったその子は、俺と聖奈の間に大きな幸せを運んでくれた小さな天使だったのかもしれない。


完全に覚醒した頭で何の躊躇いも無くそう思えた俺は、立派な嫁バカ、親バカ予備軍だろう。
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