state of LOVE

 三木家の長女の苦悩

目が覚めるとそこは、長い廊下だった。

これは夢だ。

そう瞬時に判断出来たあたり、俺の脳ミソはまだ無事なようだ。


長い廊下が、立ち並ぶ高層ビルに切り替わる。あぁ、ここはNYだ。と、離れてから一度も帰っていない故郷を思い出す。

「Wake up!」

腰に両手をあてたマリーが、嬉しそうな顔で俺を見下ろしている。これは夢か現実か。

考えずとも、マリーの表情で夢なのだと判断した。俺を見るマリーの目は、いつだってどこか申し訳なさそうだったから。

「遅れるわよ」
「遅れねーよ」
「レイは先に行ったわ」
「んなわけねーじゃん」

寝起きの悪い妹は、俺が支度を済ませてランチボックスを持って部屋に戻るまではベッドから起き上がらない。俺より先に起きるなどというそんな神がかり的なことは、今まで18年近く一緒にいるけれど、一度たりともやってのけたことがない。

今日も今日とて間抜け面で眠りこけているはずの妹。そのはずなのに、その姿は腕の中にはなかった。

「さっさと起きてミオの面倒見なさいよ」
「は?」
「は?じゃないわよ。自分の子くらいちゃんと自分で面倒見なさい」

そう言って俺の腹の上に放り投げられた美緒?は、何故かハルさんソックリの顔立ちと俺と同じ右目を持ち合わせていて。

とんでもない夢だな…などと悪態をつきながら小さな体を腕の中に収めると、パチンッと頬が打たれた。突然の衝撃に目を瞑る。


そして、再び目を開く。
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