state of LOVE
身長もあるし、スタイルも良い。服に飾られている感が皆無なだけに、モデルへの転向を引き止めたことが今更ながらに悔やまれる。

「お前さ、今からでもモデルやる?やるならメーシーに言ってやるけど」
「何?私が邪魔になった?」
「いや、そうじゃねーけど」

珍しく素直に思いを口にした俺を、レベッカは訝しんでいて。慌てて否定はしたものの、この後をどう続けようかなど考えてもいなかった。

「私が傍にいると悪い道に走りそう?」
「バーカ」
「だったら…」
「もったいねーなと思っただけだよ。他意はない」
「ふーん」

本当に?と問いたげなレベッカを無視して、着替え終えてうずうずしていた美緒を床に下ろす。すると、レベッカの真似をしてスカートの裾をちょんと摘まんでお辞儀をするではないか。

何と愛らしい!と、今ならハルさんを理解出来る気がした。

「んー!very cute!」
「それは反則だな」
「kittyから乗り換える?」
「バカ言うな。ハルさんじゃあるまいし」

「喧しいわ」

突如入り口から投げられた乱暴な言葉に慌てて振り返ると、不機嫌そうに腕組みをしたハルさんと目が合った。

「どうしたんですか?今日は休みじゃ…」
「仕事にならんやろから、美緒引き取りに来たったんや」
「あぁ…すみません、わざわざ」
「皆で志保さんの店に集まっとるから行くぞ」
「あの、セナとは?」
「大丈夫や。心配すんな」

心配すんなじゃねーよ!とツッコミたいところなのだけれど、相手が義理の父になる予定の人なだけにそこはグッと堪える。

朝からとんだ労力を消費させられたのだ。後で報いはきっちり受けてもらうとして、今は抑えておくのが懸命だろう。

「ベッキーも一緒にどうや?」
「私は遠慮するデスヨ」
「どないした?今日はマリおらんぞ」
「セナがいるデス」
「んなこと気にすんなよ」
「私は気にしなくても、セナに嫌な思いをさせるのはダメ。セナは、私のパートナーの大切な恋人デス」

悲しげに笑うレベッカに、ハルさんは困り顔で。そのままこっちに託されてもどうしようもないのでさっさと立ち上がり、ムートンブーツの感触を楽しむようにピョンピョンと飛び跳ねる美緒を捕獲した。
< 46 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop