state of LOVE
「だー」
「ん?」
「だー」
「はいはい。もうすぐだから待ってろ」
「え?美緒ちゃん何て言ったんですか?」
「腹減ったってよ」
「わかるんですか?」
「まぁ、だいたいな」

何と言っても俺の頭脳は万能なのだ。べったり一緒にいれば、簡易の「だー語翻訳機」くらいは搭載する。

まぁ、100%正解を導き出せるかと問われれば首を縦に振り難いけれど、腹が減ったくらいはわかる気がするのだ。

「美緒ちゃんのママから電話ありましたか?」
「いや。ないな」
「どうしますか?」
「何が?」
「警察に行きますか?」

本来ならば早々にそうするべきなのだろうし、聖奈から事情を聞いた時は何故コイツはそうしなかったんだ…と思ったりもした。けれど、今の俺の答えはノーだ。

「もう少し待ってみよう」
「帰ってくるんですか?」
「んー…こねーかもな」

かも…と言うよりも、帰ってこない確率の方が高い。このまま悪い方へと順調に物事が進めば、美緒は児童相談所行きになる。そうなる前に父親か祖父母でも見つかれば良いのだけれど、世の中がそう上手く回っていないことはよく知っているつもりでいる。

「ハルさん、ちーちゃんの時どうしたんですか?」
「千彩?あいつは…言うても17やったからな」
「んじゃ、龍二の時は?」
「あいつもあいつですぐ父親わかったし」
「じゃあ…」
「ちょっと待ってください」

美緒に頬をぷにぷにと弄られながら言葉を続けようとする俺に、聖奈が勢い良くストップをかけた。さて、ここでもう一悶着。と、気合を入れて大きく息を吸い込む。

「美緒ちゃんを引き取る気なんですか?」
「んー。まぁな」
「どうしてですか?美緒ちゃんはマナの子ではないですよ」
「んなことわかってるよ」

拾ったのは自分のくせに。と、火種を大きくしなように心の中でだけ吐き捨ててみる。それを察してくれたのは、正面に座るハルさんだけだった。
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