state of LOVE
ノックをすると、「はーい!」と元気な声が聞こえてくる。それだけで俺は満足で。そんな俺の横っ腹を肘で突き、聖奈は扉をスライドさせた。

「いらっしゃーい!」
「こんにちわ、ちーちゃん」
「こんにちわー」

パジャマ姿で迎えてくれたのは、満面の笑みのちーちゃん。先に来ているだろうと思っていたハルさんとメーシーの姿は見当たらず、聖奈が首を傾げた。

「はるとメーシーはまだですか?」
「うん。まだ来てないよ」
「おかしいですね。先に行くって言ってましたよね?」
「おぉ」

おかしいな…と眉を顰めた俺に、ちーちゃんが驚きの声を上げた。

「ねーねー!セナも赤ちゃん産まれたん?」
「はい?何をわけのわからないことを…」
「じゃあ、マナが抱っこしてるうさぎさんの子は?」
「ああ、この子は…」

キョロキョロと部屋の中を見渡す美緒を俺から奪い、聖奈はよいしょとベッドに腰かけた。そして、ブーツとポンチョを脱がせた美緒をベッドの上で解放する。

「セナが産んだ子ではないですけど、セナとマナの新しい家族になる予定です」
「新しい家族?」
「そうです。美緒ちゃんといいます」
「やった!また家族が増えた!」

深くはツッコまず、家族が増えたとちーちゃんは無邪気に喜ぶ。こうゆうところが好きなのだ。と、両手が空いた俺は腕組みをしてベッドサイドに置かれていた椅子に腰かけた。

「だーだー」
「んー?どうしたん?」
「美緒、いい子にしてろ。ちーちゃんはまだ安静にしてなきゃなんねーんだぞ」
「だーだー」

俺の忠告を無視し、美緒はちーちゃんによじ登ろうと短い手足を伸ばす。それを阻止しようと手を伸ばしかけたのだけれど、にっこりと笑うちーちゃんが先に美緒を抱き上げてしまった。

「セナもこんなんやったかなー?」
「セナに聞かれてもわかりませんよ」
「こんなんやったような気もする」

何とも頼りない…と、聖奈はふぅっと大きく息を吐いた。
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