state of LOVE
「おい、こら。そこの親バカ嫁バカのオッサン。俺が身の程を弁えんと千彩に手を出したみたいに言うな」
「あれ?違った?」
「俺は結婚するまで何もしとらへん!」
「また言ってるよ。ちょっとくらい手出したんじゃねーの?」
「喧しい!子供の前でそんな話すんなっ!」
「あれ?図星?」
「えー!晴人、俺にも何もしとらへん言うとったやん!」
「しとらへん言うてんねん!やめんかっ!子供もおるし親もおるんやぞ!」

「あははは。相変わらず仲良さそうで羨ましいですわ」

三人の言い争いを笑い声で止め、大介さんは俺の頭をくしゃくしゃと撫でて笑った。

「すまんかったな。痛かったやろ」
「いえ、あぁ…まぁ」
「聖奈のこと、よろしゅう頼むわな」
「はい」
「ちー坊も聖奈も、ええ人に巡り合えて良かった。幸せやなぁ、俺は」

大介さんのその一言で、プツリと緊張の糸が切れた気がした。零れた涙を慌てて拭い、ゴホンッと咳払いを一つして不安げな表情をしたままの聖奈を引き寄せた。

「許してくれるってさ」
「何泣いてるんですか」
「別にー」
「取り敢えず冷やしましょう。腫れると、せっかくの美形が台無しです」
「何?お前も顔に惚れた?」
「八割は」
「おい!だったらメーシーでも良かったじゃねーか」
「ダメですよ」

そっと頬に触れる聖奈の手が、どこか震えているようで。その手を上から包み、「ん?」と首を傾げて言葉を待つ。ギャーギャーと喧しいBGMは、この際無視だ。

「だって、その瞳はマナしか持ってません」
「まぁ…だろうな」
「その瞳も、傷も、セナは全部愛してますよ」
「じゃなきゃお別れだけどな」

強がってみても、やはり俺にはこれがコンプレックスで。それを丸ごと受け止めてくれると言うのだ。俺が聖奈以外の女を愛せるはずがない。

そう改めて実感させられた瞬間。
< 96 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop