state of LOVE
「それで…わかりますか?この人のこと」
「んー…それがなぁ…」

いつの間にか聖奈がテーブルに出していた名刺を見つめ、大介さんは眉間に皺を寄せる。俺に着いてテーブルを囲んだ大人三人は、何だ?何だ?と首を傾げながらその名刺を覗き込んでいた。

「ん?ヤクザ屋さんの名刺?どうしてこんなものをうちの息子が持ってるんだか」
「美緒の母親を訪ねて来てた人がいて、その人が教えてくれたんだよ」
「パパだって?」
「美緒の母親は、自分が産んだ子は施設に預けたって言ってたらしい」
「じゃ、違うね」
「おぉ」
「え?ちょっと待て。親子間でだけ納得すんなや」

俺達親子は、邪魔をする相手さえいなければこうしてスムーズに話が進むのだ。言葉数も少なくて済むし、俺にとってメーシーは状況を説明するのに一番楽な相手だ。

「何でこの人が美緒の父親やないって判断すんねん。まだ早いんちゃうか?」
「はぁー…王子ってば幸せボケ?」
「はぁっ!?」
「もしこの人が父親なら、美緒の母親は美緒を手元に置いてることを隠しませんよ。隠す理由が無い」
「は?」
「あちゃー。完全にボケてるね」
「え?え?俺も全くわからんのやけど!」
「いい?この人が美緒ちゃんの父親だったとしたら、母親にとって美緒ちゃんは金の生る木だよ。手放すなんてあり得ない」
「あぁ…そうか」
「だから、違うってことです」

渋々納得するハルさんと、「なるほど!」と手を叩くケイさん。反応は違えど、これで全員が事態を把握したことになる。


「ハルさん、あのー…」


さて、それでは本題に。そんな気分の俺達に、大介さんは何故だか申し訳なさそうに眉尻を下げてハルさんの名を呼んだ。

「はい?」
「今更言うんもあれなんやけど…」
「はぁ」
「この深山って奴なんですわ。ボスんとこからちー坊連れて行ったん」
「はぁ…え?」
「こいつに売られたんですわ、あの子は」

売るとか売らないとか、穏やかじゃない。これはもしかしたら俺達が聞くべき話ではないかもしれない。特に聖奈は。

そう思ってチラリとハルさんを見上げると、小さく頷きが返された。
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