state of LOVE
「聖奈、美緒寝かせてこい」
「え?でも…」
「いいから。話は俺が聞いておく」

グリグリと俺の肩に額を擦り付ける美緒を聖奈の腕へと移すと、今度は胸に顔を埋めてふにふにと掴み始めた。困ったように笑う聖奈の髪を撫ぜ、席を立つように促す。

「お前も先に寝てていいから」
「はい。でも…いいんですか?これは」
「あぁ、いいよ。仕方ねーから吸わせとけ」
「はい、わかりました。では皆さん、お先におやすみなさい」

ペコリと頭を下げる聖奈に、大人達は不思議そうで。パタンとリビングの扉が閉まると同時に聞こえたのは、ハルさんの声だった。

「何や、今の意味深なやり取りは」
「え?」
「寝かしつけるだけやろ?」
「あー…アイツおっぱい吸いたがるんですよ。結局昨日もそうして寝たんで。だから吸わせとけって言ったんです」
「いやいや。何でお前の許可が要るねん」
「え?当然じゃないですか。俺の女ですもん」
「いやー。それがうちの嫁の乳吸うてた奴が言うセリフか。俺の女やとよ。偉くなったもんやなぁ」
「いやいや。覚えてないんで責められても」

大人げないなぁ…と思うも、美緒が男の子だったなら俺も話は違ったかもしれない。そう思い、それ以上の反論はしなかった。

「すんません、大介さん。ちょっとうちの婿が横柄な態度取ったもんで」
「いや、それはええんやけど…」

チラリ、と視線が寄越される。ここで席を立てと言われてもその気が無い俺は、そのまま視線をハルさんに受け渡す。「自分で言えよ」と苦笑いをしながら、ハルさんは聖奈が座っていた位置に腰掛けて大介さんと向かい合った。

「ええんです、こいつは。どの道あの子引き取る気でおるみたいですから」
「まぁ…ハルさんがそう言うんやったら…」
「続き、お願いします」

もう既に、メーシーとケイさんは輪から外れてソファに腰掛けている。話を聞いていないわけではない。けれど、俺達はその件に関しては口を挟まない。

それが彼ら…主にメーシーの意思表示なのだろうと思う。

「暫く、えらい怖がってた時期ありましたやろ?」
「ん?智人が面倒見てた時ですか?」
「そうです、そうです。今までよぉ言わんかったんやけど…」

ゴクリ、と唾を呑み込む音が、やけに大きく聞こえた。酷く緊張しているだろう大介さんとは逆に、ハルさんは首を傾げて呑気に構えている。

いったい何が暴かれるのか。魔王の血を引いた俺は、少しのわくわく感を押し殺した。
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