朝子
回想
「離婚って……姉さんどうしたの」

 姉の方から電話を掛けて来るなんて、珍しいことだった。

 それも、くぐもったような声で――どうやら泣いているらしい――、夫と離婚したいなどと言う。

『わたし、もう耐えられないわ……はやくこの家をでたいの……っ』

 うわずった声は、本当な姉が参ってしまっているのだと言うことを、電話越しにもはっきりと伝えていた。

「姉さん、落ち着いて!篤郎さんと、なにかあったの?」

 十以上も年の違う夫婦ではあったが、姉の朝子とその夫との中は付き合っていた頃から一度も不穏なかげりなど見せたことないはずだった。
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