ピュアらぶストーリー。

─稲瀬side─


「稲瀬ー!!」

昼休み珍しく翔太がおらんなぁって思ってたら、5限目の授業開始2分前、物凄い勢いでオレの座ってる席に押し掛けてきた。どうも、稲瀬隼人(いなせはやと)です。

「さっき実結ちゃ、違った実結に打ち明けて、これがまた、しかも帰りまで約束が嬉しすぎて死にそうや!!」


翔太は興奮しきって何言ってるかよくわからんけど、この様子やと実結ちゃんに気持ちは伝わったみたいやな。


1人弾丸トークをかました翔太は満足したのか、オレが何か言う前に席に戻っていった。
…恋したらここまで人は壊れるんか。怖いわ。


5限目も終わり、残るは6限の数学かぁ、だるいなとか思っていると、またもや翔太がオレの席におしかけてきた。が。先ほどとテンションがまるで違う。


「稲瀬ー…」

…この1限の間になにがあってん。

「オレこの一週間で実結のこと振り向かせるって言ったけど、どうしたら振り向いてくれるんやろか…」

オレ彼女おったことないし、と言っている翔太に苦笑いする。

翔太はモテる。オレほどではないけど。
告白も受けているが、今はバスケしか考えられへんと言っていつも断ってる。

こいつとは中学から一緒やけど、くそ真面目で女と遊ぶ気は全くないらしい。
だから高校入って好きな子ができたって聞いたときは、純粋に嬉しかった。


「せやなぁ。翔太は変に策略練るとか、恋の駆け引きとかせんと素、でいればええと思う。」

「…素?」

「せや。お前の良さはそこやろ?素で人を惹き付ける」

オレとか常に先を呼んで頭フル回転させて行動するから、翔太のそういう純粋なところが羨ましかったりする。

本人はそこに気づいてないからもったいないけど、そんな翔太やからこそ男女問わず好かれるんやろな。


「おん!ようわからんけど元気でたわ!!おおきに、稲瀬」


オレはできる子やぁ!、とかなんとか言いながら席に戻っていく翔太。

いっつもオレの前では実結ちゃん、て呼んでたのに実結になってた。

いつやったか、翔太が言っていたことを思い出す。


『いつか実結ちゃん、いや実結って本人の前で呼んだんねん!!』

1つ目の夢、叶ったんちゃう?
< 11 / 39 >

この作品をシェア

pagetop