ピュアらぶストーリー。

ようやく実結も落ち着いてきて、とりあえず勉強するために近くの喫茶に入ることになった。


「何飲む?」

「うーん…あんまりこういう大人な雰囲気のお店に入ったことないから、何がいいかわかんないや」

確かに、それは俺も同じや。
コーヒー一杯650円てなに。しかも、ジュースが見当たらない。


「お決まりでしょうか?」

「うーん…じゃあ私、ミルクティーで」

「じゃあ俺は、このコーヒーで」

あかん、見栄はった。
コーヒーとか、あんま好きじゃない。


普段お茶以外に飲むとしたから果物系のジュースくらいや。
あっ炭酸は部活で禁止されてるから飲まへん。


コーヒーとか、大人だねっていう実結に、ひきつった笑みを返した。






「どうしてここ銅が析出するの?」

「これはイオン化傾向が……」


ばりばり理系の俺とまあまあなんでもこなす実結。

俺が文系科目が苦手ということで、理系科目を教えるかわりに文系科目を教えてもらうことになった。


果たして俺なんかが教えられるんやろか、って思ってたけど、実結の飲み込みの速さもあってなんとか役にたってるっぽい。


「翔太くんすごいね!!すごく分かりやすいよ」

「ほんまに?役にたてて嬉しいわ!」

「もう先生になったほうがいいよ!!」


ベタ褒めの実結。
ベタ惚れの俺。

うまくないとか言わんといて。





夕方まで勉強会は続き、時々雑談も交えて充実した時間を送った。

いよいよ明日がラストチャンス。

この一週間で俺には実結が必要なんやと、改めて思った。

日に日に好きが、強くなる。


実結を家まで送り届けて、別れ際にぎゅっと抱き締めた。

最後の、悪あがき。

離れたくない、離したくない。


そんな俺の意図が伝わったかのように、実結は呟いた。

「きっとこの先、私にはこの温もりが必要なんだよ。すごく、心地いい」


深い意味はわからなかったけど、その後フッと微笑んだ実結を見てひどく安心した。


また明日ね、と言って家に入っていった実結を見て、もう一度強く決心した。
< 36 / 39 >

この作品をシェア

pagetop