pierce,prince



その、たった2文字の言葉で表せる気持ち。




『あたしはただ…
葵が好きなだけだよっ…』



「海…?」



『ずっと、ずっと…葵だけが
大好きだったのに。
葵はなんにもわかってない。
わかってくれないでしょう?』




「んなこと…」



『あるよ!葵にはわからない。
わかってくれないからッ…!』



「おいッ!」



葵の大きめな怒鳴り声に
思わず肩をすくめる。



「…でかい声だして、ごめん。」



葵の顔があたしの首に埋まる。



『あ…おい…?』




「俺だって…好き。」



『…?』



「俺だって、海が好きなんだよ」



ぎゅうっと強く囚われたカラダは
逃れることのできない。


逃れたくないと、懇願する。



「海のことが…
ずっとずっと好きだった。
これからもずっとずっと
好きだから…だから…
そう…、そんなに泣くなよ…?」



葵の声が不安げに鳴いた。



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