とあるアイドルの恋愛事情 【短編集】
収録時間より待ち時間の方が長げぇような現場で、急遽ある雑誌の取材を受けることになった。

本日の話題は、「理想の女」

思い思いに理想の女像を語った後、メシを食ったりゲームをしたりとやることはそれぞれ。俺もその日はちょうど読みかけのマンガがあって、それに目を通しながら何気なしに取材を受けてるサキの話を聞いていた。


『俺の言うことを一番に信用してくれる女の子、コレが一番。周りの噂とかにいちいち流されるんじゃなくて、俺の言うコトを信じてくれる子。それが理想。コレ、都合良すぎ?』
 

そんな何とも都合の良すぎる答えに、インタビュアーの本多さん(通称:本ちゃん)も思わず苦笑い。んな女いねーべ。とマンガを読みながら突っ込んだ俺に、本ちゃんも大きく頷いた。

「イヤイヤ、実際いるんだな、コレが」
「どこに?」
「俺の初恋の姫」
「出たよ、初恋の姫」

サキの「初恋の姫」と言えば、ちょっとした有名人で。以前その「初恋の姫」に聴かせたいからとマキと一曲取り合った件も含め、恋愛話になるとサキの口からはこの「初恋の姫」の話しか聞いたことが無い。


「うちの姫はホントそりゃ…って、本ちゃんコレ、オフレコでお願いね」


サキが可愛く首を傾げるもんだから、本ちゃんもソレに負けてレコーダーのスイッチを切った。ホラ、皆すぐコレだよ。コレが俺が「サキはずりー!」って日頃から不平を述べる原因。

「うちの姫はもうホント可愛くて、純粋で…」
「うちのって、いつからオメェのオンナになったんだよ」
「で、俺のコト疑ったりなんかぜってぇしないわけ」
「流すのかよっ!」
「うっさいよ、リキ。俺は今本ちゃんと話してんの」

大のオトナがガキの恋愛話なんかに興味あるかよ。と突っ込んだものの、本ちゃんはそりゃもう真剣にサキの話に耳を傾けていた。

まぁ、滅多に聞けないアイドルの恋愛話だから、興味があるのもわかるケド。

「マジしつけー。何でアイツは「初恋の姫」の話になるとこうもしつけーんだよ」
「付き合ってんじゃね?」

マキのコトバに、思わずマンガ本のページを閉じた。イヤイヤ、そんな話聞いたコトねぇ。と、笑い混じりに突っ込んでみる。
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