とあるアイドルの恋愛事情 【短編集】
知り合ったきっかけは、マキの紹介。

昔々、まだあどけない少年やった俺に一枚の薄いピンク色をした名刺を手渡し、にっこりとは言い難い、強いて表現するならば「ニヤリ」と微笑んであいつは俺をこの街に引きずり込んだ。

右も左もわからへんこんな街で純情少年やった俺が楽しめるはずもなく、つまらんと不貞腐れてた数回。回数を重ねる毎に、成長と共に街に馴染んだ。

で、あいつにも馴染んだ。

「いらっしゃーい。あれ?今日はあんただけ?」
「俺だけやったらあかんのかい」
「しゃぁないなぁ。ちょっと遊ぶだけやで?」
「客や、客!もっと丁重に持て成せ」
「はいはい」

席に着くなりタバコに火を点けたこの店のNo.2ホステス、小夜。

本名も知らんし、その生態は結構な年数付き合ってるはずやのに今だ明らかではない。それを必死に探ろうとしてたんは最初の数ヶ月。今やもう諦めて掌で転がされてる。
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