TIME WAR
川で拾った古い時計が静かな教室に音を奏でる。 何分……いや何十分渉君と二人で教室にいるんだろう


全く会話の無い中、私は思い出す。
渉君とは昨日まで1回も話した事はなかったのに

不思議なくらい隣に居るのが自然に覚えた。


校庭の外でカキーンッと爽快な音がする。今日も野球部が練習をしてる


「渉君は……お見舞い行ってるの?」


静かな教室に私の声が欲響く。渉君は少し苦しそうな顔をした。


「行く……けど、お兄ちゃんには合わせる顔がないんだ俺……俺のせいなのに兄ちゃんだけ」


やっぱりこの話題はそっとしといた方が良かったのかもしれない


渉君はお兄ちゃんの話をするときは苦しそうな切ない顔が多い


チクタクと自分の存在を示すかのように時計の音が響いた


「そういえば、協力して欲しいことって?」


昨日、帰り際に言われた一言を時計の音で思い出した。


私は立ち上がって2階準備室を覗いた。
信平は2階準備室で昨日の椅子に座って椅子を揺らしている


「その、時計だよ」


渉君に言われた時計を見ながら渉君に向き直る。時間を操れるこの時計


「この時計を使うの?」

「そう、それで2ヶ月前の俺に忠告するんだ」


2ヶ月前とお兄ちゃんが意識不明になった事故と関係がありそうだ


「私は何すればいい?」

「協力、してくれるのか?」


私は大きく首を縦に振った。それから窓に体をむけて2階準備室を覗く


信平はこっちを見ていた

「この時計拾ったの私だし、あ……でも1つお願いがある」


ずーっとみている信平が物凄く遠くの人に感じながら見ていた


渉君が私の隣で同じ風に2階準備室に目を向けながら小さく何でもするといった


「渉君のお兄ちゃんのお見舞いに行かせてほしい」


「そんなのでいいの?」

そんなのでって……
私がどんなことを言うと思っていたんだろうか


「いいよ」


こっちを見ていた信平があの冷たい瞳で渉君を見ていた


冷たい冷たい
だけど切ない感情がにじみ出ている瞳で


「じゃあ、今からいこう」


ばっと荷物を掴んだ渉君に続く。信平に会いに行くのはまた今度にしよう

昨日、信平はいるなんて核心も無かったのに私は会いに行くつもりだった

少し立ち止まっていた私を不思議に思ったのか数歩先に歩いていた渉君が戻ってきた


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